約 1,012,623 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2028.html
シエスタは馬車の中で、眠れぬ夜を過ごしていた。 暗闇の中で目を開けて向かい側の椅子を見ると、モンモランシーが椅子の上でに横になりすぅすぅと寝息を立てている。 カリーヌは、水の精霊に危害を加えるメイジを一人で相手すると言っていた。 ラグドリアン湖の湖底にいる水の精霊、それに危害を加えるだけでも大変なことなのに、水の精霊を手こずらせるのだから、襲撃者はかなりの手練れなのだろう。 カリーヌの手伝いをしたいと申し出たシエスタだが、「客人を危険な目に遭わせるわけにはいかない」と言われ、申し出を断られてしまった。 オールド・オスマンからカリーヌ・デジレは『烈風カリン』だと聞かされていたが、貴族の世界に仲間入りを果たしてまだ間もないシエスタには、いまいちその強さや伝説がピンとこなかった。 シエスタは暗闇の中で、今からでもカリーヌを手助けに行くべきだろうかと悩んでいた。 「きゅいーーーーーーーーーっ!」 「!」 シエスタが飛び起きる。 突然聞こえてきた、何かの叫び声に聞き覚えがあった。 シエスタは馬車から出ようと、内側にかけてある鍵を開けようとしたが『ロック』の魔法がかけられており鍵が開かない。 「開かないっ、何で?どうして!?」 「な、なに?どうしたの?」 モンモランシーがシエスタの声に驚き、飛び起きる。 「モンモランシーさん、この扉鍵がかかってるんです!魔法で鍵を開けて下さい!」 「え?え?でもカリーヌ様が…」 「お願いします!」 「わっ、解ったわよ、ちょっと待って」 モンモランシーは懐から杖を取り出すと、馬車のドアノブに向けて『アンロック』を唱えた。 しかし、何の反応もない。 モンモランシーは再度杖を向けると、先ほどよりもゆっくりとした動作で『アンロック』を使った。 「……駄目ね、きっとカリーヌ様が『ロック』をかけて出かけらしたんだわ、私の『アンロック』じゃ太刀打ち出来ないみたい」 「そんな…」 そうこうしているうちに、馬車の外からドスン、と音がした。 馬車の窓を開けて外を見ると、月明かりに照らされた一匹の竜が地面に横たわっていた。 「シルフィード!?」 シエスタの叫びに気がついたのか、シルフィードは首を上げ辺りを見渡したが、シエスタの姿は見えない。 「シルフィード!シルフィード!」 力一杯シエスタが叫ぶと、シルフィードは「きゅい!きゅい!」と鳴いて、馬車の方を見た。 「シルフィードって、タバサの使い魔?そういえば最近タバサを見てなかったけど…なんでこんな所にいるのよ」 モンモランシーが訝しげに呟いて、外を見る。 「きゅーん…」 シエスタとモンモランシーの姿を見たシルフィードが、助けを求めるような鳴き声を出した。 「きゅっ! きゅい…」 苦しそうに鳴くシルフィード、そこに突然風が舞い起こり、シルフィードの体を地面に押しつけた。 そして、シルフィードと馬車の間に、『フライ』で飛んできたカリーヌがふわりと着地した。 数秒遅れて、黒づくめのローブに身を包んだ二人の人間が、シルフィードの側にゆっくりと降ろされた。 「カリーヌ様!その竜は私の知り合いです!」 シエスタが馬車の中から叫ぶ、するとカリーヌは馬車を一瞥して杖を降った。 ガチャリと音がして馬車の扉が開くと、シエスタは一目散に外に出てシルフィードの側に駆け寄ろうとしたが、風で作られた障壁があって近づくことができない。 ぶわりと風が舞う、シエスタの目の前で黒づくめのローブがはぎ取られ、二人の顔が顕わになった。 「キュルケさん!それに、タバサさんまで、どうして」 「お知り合いですか?」 カリーヌが問うと、シエスタはカリーヌに振り向き、叫ぶような声を上げた。 「二人は、魔法学院の友人です!魔法を解いて下さい!」 「この二人は、先に魔法で手を出しました。貴方の同級生であっても油断はできません。……手足だけは拘束させて頂きますよ」 カリーヌがキュルケ達を覆っていた障壁を解く、と同時に二人の両手両足は風によって拘束され、地面に大の字に寝かされた。 倒れている二人の肩を叩いて、シエスタは二人の名を叫んだ。 「キュルケさん!タバサさん!」 何度か揺さぶってみたが、二人とも返事はない。 そこにモンモランシーが駆け寄り、二人の容態を確認した。 「…大丈夫みたい、二人とも気絶しているだけだわ」 「本当ですか!?」 「ええ。それにしても…シルフィードは翼を痛めてるわね。波紋で手伝ってくれないかしら」 「はい!」 シルフィードは強く体を打ち付けたせいか、体の至る所に青あざのようなものを作っていたが、二人が協力して治療を施したため、みるみるうちに青あざは消えていった。 「きゅい…」 「もう大丈夫よ、シルフィード」 シエスタがシルフィードの頭を撫でると、シルフィードはまるで猫のように顔をこすりつけた、目には涙も浮かんでいる気がする。 カリーヌはモンモランシーに近寄り、呟いた。 「ミス・モンモランシー。この二人が湖面に向けて魔法を唱えていました。それを目撃した私に殺傷能力のある魔法を私に向けたことから、十中八九襲撃者でしょう…ただ、確認せねばなりません。お疲れの所に頼むのは心苦しいですが、今から水の精霊を呼んで頂けますか」 「わ、解りました」 モンモランシーは頷き、早速ロビンを呼びに行った。 「うっ…」 「キュルケさん?大丈夫ですか、キュルケさん!」 キュルケが目を覚まし、苦しそうにうめいた。 それに気づいたシエスタが屈み込んで、顔をのぞき込み、声をかける。 「……あ、れ? シエスタ?」 「キュルケさん、大丈夫ですか?どうしてこんな所に…」 「どうしてこんな所にって、私の台詞よ、それは……あ、タバサは?タバサは!?」 「ミス・タバサは眠っています、大丈夫です、怪我もありません」 「そう…よかった」 キュルケが安堵のため息をつくのを見て、シエスタも安心を得たた。 友人を、タバサの身を心配して、何か危険な任務に巻き込まれたのだろう、水の精霊を襲撃したのがこの二人だとしても、そこには何か理由があるに違いないと思ったのだ。 「水の精霊に引き渡す前に、事情を説明して頂けませんか」 「…こちらのめっぽう腕の立つご婦人は誰かしら」 「ひとに名を訪ねる前に、名乗るのが礼儀です」 つん、と見下したような口調でカリーヌが言うと、キュルケは少しむっとしたが、すぐに気を取り直し名を名乗った 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。『微熱』のキュルケと呼ばれておりますわ」 つんとした態度で名乗ったキュルケだが、カリーヌはそれを気にすることなく淡々と答えた。 「運命的な物を感じますわね。私はカリーヌ・デジレ。在学中は私の娘ルイズがずいぶんとお世話になったようですね…以前は『烈風』と呼ばれておりました」 「…!」 キュルケが目を見開き、首を動かしてまじまじとカリーヌを見る。 ルイズの母親というだけでも驚きなのに、二つ名が『烈風』だと聞くと、たちの悪い冗談だとしか思えなかった。 だが、キュルケもタバサも、この人物を殺して逃げる覚悟で魔法を放った、それなのに傷一つ追わせることもできなかった。 キュルケもタバサも自分の魔法に自信があったが、これ程までに手も足も出なかったのは生まれて初めてかもしれない。 キュルケは、この人物が『烈風カリン』なのかと納得し、心中でため息をついた。 不意に、キュルケの拘束が解かれた、タバサとシルフィードの拘束も解かれ、体が自由になる。 上体を起こしたキュルケがカリーヌを見つめる、するとカリーヌは先ほどまでの厳しい目つきではなく、どこか寂しそうな雰囲気を纏わせた。 「火傷をした娘を介抱して下さったと、ミス・シエスタ、ミス・モンモランシーから聞き及びました。ここから逃がすことはできませんが、拘束だけは解かせて頂きます」 「…お心遣い、痛み入りますわ」 そう言ってキュルケは立ち上がり、タバサの隣に移動すると、静かに座り込んでタバサの顔をのぞき込んだ。 「ふう…参ったわね。どうしよっか」 キュルケは優しくタバサの頭を撫で、呟いた。 「あの…キュルケさん、水の精霊を襲おうとしていたのは、本当ですか?」 シエスタがキュルケの顔をのぞき込む、 「ええ、本当よ。……ラグドリアン湖の水位が上がって、被害が出てるからってね。水の精霊を退治しないといけなくなったの」 「そうなんですか…じゃあ、お二人が水の精霊を怒らせた訳じゃないんですね。でも、そうだとしたら、水の精霊はなんで水位を上げたんでしょう」 「私に聞かれたって解らないわよ、ところであんた達は何でココにいるの?モンモランシーまで居るなんて」 「それなんですけど、今、ある人を治療するのに『水の秘薬』がどうしても必要なんです。水の精霊を怒らせた人のせいで秘薬が入手できないと聞いて、直接交渉しに来たんです。そうしたら水の精霊は、襲撃者を退治したら願いを聞くと言って…」 「そうなの…でも、こっちだってそう簡単には引き下がれないわよ、これは、ホラ…タバサの」 シエスタは、キュルケが言いたいことを悟った。 『タバサに与えられた任務』だと言いたいのだ。 タバサの母を治癒したときに、だいたいの事情は聞いているので、この任務を失敗したら何らかの制裁がタバサと、タバサの母、もしくは数少ない召使いにも与えられるだろう。 ここ数週間、魔法学院でもキュルケの姿が見えなかったのは、タバサと行動を共にしていたからだと難なく想像できた。 どうすればよいのか、シエスタは悩んだ。 そもそも、ラグドリアン湖の水位が上がらなければ、二人が差し向けられることも無かったはずだ。 なら、水の精霊に交渉してみるしかない、とにかく水位を上げ続ける理由だけでも聞かなければならない。 シエスタは拳を握りしめて、ゆっくりと立ち上がった。 「参っちゃったわね。あなたたちとやりあうわけにもいかないし、水の精霊を退治しないとタバサの立つ瀬はないし……」 「キュルケさん。水の精霊を襲うのは中止してください。そのかわり、私が水の精霊に、どうして水かさを増やすのか理由を聞いてみますから。水かさを増やす原因に対処すれば、戦う理由なんて無くなるはずです」 キュルケが驚いたように目を見開き、シエスタを見た。 「水の精霊が、聞く耳なんかもってるの?」 「私達は、襲撃者をやっつけるのと引き換えに、秘薬をもらうって約束したんです…水浸しになったこの土地が、元に戻ればいいんですよね?」 キュルケは少し考えて、タバサを揺すった。 タバサはしばらくすると目を覚まし、身じろぎをした。 キュルケに抱きかかえられて立ち上がると、シルフィードがタバサに顔を近づけた。 「大丈夫」 タバサはそう言ってシルフィードの頭を撫でると、今度はキュルケに向き直った。 カリーヌの姿を見たタバサは複雑そうな表情でキュルケを見た、もっともタバサの表情の変化は極めて乏しいので、タバサが困っていると解るのはキュルケとシエスタぐらいのものだ。 「水かさが元に戻れば良いんでしょう?」 「………」 タバサはこくりと頷いた。 しばらくすると水の精霊が現れたのか、湖面が輝きはじめた。 シエスタはカリーヌと向き合うと、怯えることなく、堂々とカリーヌの目を見た。 「カリーヌ様、二人を水の精霊に引き渡すのは待って頂けませんか。水の精霊に水を引いて貰うように頼みたいんです。水かさを増した原因に対処すれば、二人も水の精霊を退治せずに済みます」 力強くもなく、怯えたようでもなく、シエスタはひたすら冷静にカリーヌの目を見つめていた。 「……よいでしょう。ただし水の精霊を怒らせる真似は決して許しません」 「ありがとうございます。」 シエスタはカリーヌに礼を言って、モンモランシーの側に駆け寄った。 ちょうど水面が盛り上がり、水の精霊が姿をあらわした所だった。 人間のような形を取らず、不定形のままでうねうねと動いている。 「水の精霊よ。もうあなたを襲う者は、もう貴方を襲う気はないと話しているわ」 モンモランシーがそう言うと、今度はシエスタが口を開いた 。 「水の精霊さん、水かさを増やす理由を教えて貰えませんか。できれば、水かさを増やすのは止めて欲しいんです。私たちにできることなら、なんでもしますから、お願いします」 水の精霊は、ゆっくりと大きくなっていき、モンモランシーそっくりの姿を取った。 「お前たちに、任せてもよいものか、我は悩む。しかし、お前たちは我との約束を守った……『太陽』よ、お前がいるのならば、我はお前を信じることにしよう」 モンモランシーは「まただ」と呟いた。 太陽という名の者は聞いたことがない、話の流れからすると、シエスタを指しているようだが…なぜシエスタが水の精霊に知られているのかが解らいのだ。 そうこうしているうちに、水の精霊はモンモランシーの姿から、20年代前半の美しい女性の姿に変わっていき、シエスタの目の前にまで近づいてきた。 「太陽よ。人間どもが流した汚れた水を浄化し、我に波紋を与えたリサリサの血を引きし者よ。我はそなたを信用しよう」 「!」 シエスタの目が驚きに見開かれる。リサリサ、つまりシエスタの曾祖母は、水の精霊を助けた過去があるようだった。 「数えるほどもおろかしいほど月が交差する時の間、我が守りし秘宝を、お前たちの同胞が盗んだのだ」 「秘宝ですか…」 「秘宝?」 モンモランシーが「秘宝」と聞いて首をかしげる、モンモランシーは水の精霊が何かを守っていたなど知らなかった。 「そうだ。我が暮らすもっとも濃き水の底から、その秘宝が盗まれたのは、月が三十ほど交差する前の晩のこと」 小声でモンモランシーが「おおよそ二年前ね」と呟く。 「我はその秘宝を探すため、大地を水で浸食しているのだ。水がすべてを覆い尽くすその暁には、我が体が秘宝のありかを知るだろう」 「…………」 ハルケギニアを水が覆うまで何年かかるだろう、数百年、いや数千年か。 あまりにも気が長い話に、シエスタは絶句した。 秘宝を取り返すためにハルケギニアを水没させるつもりだとは思っていなかったのか、モンモランシーも多少驚いている。 「き、気が長いんですね…」 「我とお前たちでは、時に対する概念が違う。我にとって全は個。個は全。時もまた然り……今も未来も過去も、我に違いはない。いずれも我が存在する時間ゆえ」 どうやら水の精霊に寿命という概念は無いらしい、ずっと長い間、気が遠くなる昔からこの湖で暮らしてきたのだろう。 その途中でリサリサに会ったのかと思うと、シエスタは胸に何か熱いものがこみ上げる気がした。 「水の精霊さん、私たちがその秘宝を取り返してきて来ます、その秘宝はいったいどんな物なんですか?」 「『アンドバリ』の指輪。我が共に、時を過ごした指輪」 モンモランシーは秘宝の名に聞き覚えがあったのか、そういえば…と口を開いた。 「なんか聞いたことがあるわ。『水』系統の伝説のマジックアイテム。たしか、偽りの生命を死者に与えるとか…」 「そのとおり。誰が作ったものかはわからぬ、単なる者よ、お前の仲間かも知れぬ。ただお前たちがこの地にやってきたときにはすでに存在した…」 水の精霊はモンモランシーの言葉を肯定し、話を続ける。 「死は我にはない概念ゆえ理解できぬが、死を免れぬお前たちにはなるほど『命』を与える力は魅力と思えるのかもしれぬ。しかしながら、『アンドバリ』の指輪がもたらすものは偽りの命ゆえ。 単なる者よ、偽りの命に動かされた、自我を持たぬ者にしかならぬ。指輪を使いし者にしか従わぬ、操り人形よ……」 、 「とんでもない指輪ね……水の精霊よ、誰がそれを盗んだのか、名前や、背格好とか、手がかりになりそうなものを教えて」 モンモランシーが問うと、水の精霊はしばらく体を震わせてから答えた。 「風の力を行使して、我の住処やってきたのは数個体。眠る我には手を触れず、秘宝のみを持ち去っていった。姿形はわからぬ…だが個体の一人が『クロムウェル』と呼ばれていた」 水の精霊の言葉にキュルケが答えた。 「…聞き間違いじゃなければ、アルビオンの新皇帝の名前よね」 カリーヌが静かに頷く。 モンモランシーは後ろを振り向き、キュルケに異を唱えた。 「ちょっと待ってよ、クロムウェルなんて名前、何人もいるじゃない」 だが、カリーヌは水面に近づき、モンモランシーの隣に並び、こう呟いた。 「ほぼ間違いはないでしょう。神聖アルビオン帝国の皇帝を名乗るクロムウェルは、神より授かった虚無の魔法を用いて死者をも蘇生させ、それによって多くの貴族を掌握したと言われています」 「え…」 モンモランシーが絶句する、それはこの場にいる皆の総意でもあった。 だが、一人、カリーヌだけは凛とした表情を崩さず、水の精霊に向き合って口を開いた。 「水の精霊よ、約束しましょう。その指輪を何としてでも取り返します。ですがすぐに取り返すことは出来ません。しばらくの間水かさを増やすのを待って頂けませんか」 水の精霊はふるふると震え、答えた。 「わかった。お前たちを信用しよう。指輪が戻るのなら水を増やす必要もない…お前たちの寿命がつきるまでの間に、指輪が戻らぬのなら、我はまた大地を浸食するだろう」 「永劫の長き時を生きる水の精霊よ、貴方のご判断に感謝致します」 カリーヌは静かに呟き、感謝の意を表した。 水の精霊はまた震えだすと、今度は片手を前に出して、シエスタの前に手のひらを見せた。 「約束の通り我が体の一部を渡そう、太陽よ、リサリサの血を引きし者よ、ここへそなたの波紋を流すのだ」 シエスタは恐る恐る水の精霊の手を取った。 そして次の瞬間、シエスタの体に、電撃のようなものが走った。 「――!」 「新しき盟約、リサリサの盟約に基づき、我は我の体の一部とともに、そなたの体にリサリサの波紋を渡そう。波紋戦士が訪れたとき、リサリサから預かりし記憶を渡す盟約は、これで果たされる…」 シエスタは自然と、波紋の呼吸をしていた。 両手に集まった波紋が水の精霊の体に通り、水の精霊はそれに応じて球体を作り出す。 「ちょ…」 モンモランシーが、言葉にならないほど驚き、慌てる。 シエスタの手に渡された『水の精霊の涙』は、涙と呼べるような量ではないのだ、洗い桶一杯分はありそうな『水の精霊の涙』に、モンモランシーは背筋が寒くなる思いだった。 「そなたの力は我等精霊にとって命そのもの、太陽を木々が受け、木々が土地を豊かにし、土地は水を浄化する。だがそなたの力は、波紋は、我等精霊に絶大なる力を与える」 そう言って水の精霊は姿を変え、今度はモンモランシーの姿を取った。 「古き盟約の者よ、我はそなたに感謝しよう、太陽を我が元へ導いたのはそなたならば、我は今ここで新たに盟約を結ぼう」 「ほ、ほんとうですか、わわわ、わかりました!」 モンモランシーは緊張しつつ、腰に下げた袋から針を取り出し、指先に軽く突き刺した。 慌てたせいか、ダラダラと血が流れてしまったが、そんな事を気にしている余裕はない。 水の精霊が差し出した手の上に、モンモランシーが血を垂らすと、水の精霊は体を震わせて不定型な形に戻った。 「これ新たに盟約は結ばれた。単なる者よ、我はそなたと力となろう…」 そう言って水の精霊は、ごぼごぼと姿を消そうとした。 その瞬間、タバサとシエスタが水の精霊を呼び止めた。 「「待って」」 タバサが他人を呼び止めるところは、皆見たこともない、キュルケですら少し驚いている。 シエスタはタバサを見ると、静かに頷いた。先に質問してくれと言う意味だ 「水の精霊。あなたに一つ聞きたい」 「なんだ?」 「貴方は『誓約』の精霊と呼ばれている。その理由を知りたい」 「単なる者よ。我とお前たちでは存在の根底が違う。ゆえにお前たちの考えは我には深く理解できぬ。 しかし察するに、我に決まったかたちはない故に我は変わらぬ。お前たちが世代を入れ替える間も我は水と共にあった。 移り変わる者よ、おまえ達は、おまえ達にないものを欲するのであろう、祈りという形で……」 タバサは頷き、目をつむって手を合わせた。 いったい、誰に何を約束しているのだろうか解らないが、キュルケがその肩に優しく手を置いたのを見て、シエスタは「母を必ず治療する」と約束しているのだと気がついた。 シエスタは両手に波紋を流し、水の精霊から渡された体の一部を球体に保ちながら、水の精霊に質問した。 「水の精霊さん、私は、心を壊す毒を治す術を知りたいんです、さきほど私の心に触れたようにして、心を病んだ人を治すことはできますか?」 「太陽よ、体を治すことはできよう。だが心は我にも治せぬ。先ほどそなたの記憶から、心を病んだ者が見えた。そこにいる蒼髪の単なる者に近しい者であろう」 シエスタが「しまった!」と心の中で呟いた、モンモランシーとカリーヌに、タバサの身内が心を病んでいると知られてしまったからだ。 しかし、水の精霊に質問するチャンスなど、今ぐらいしか無いと思うと、質問せずにはいられなかったのだ。 「古き者。エルフを頼るが良かろう。彼らは精霊と共に自然と共にありし者。故に体の組成にもさることながら精神の組成にも関わる。 彼らは毒を作り出せる、それ故に解毒にも彼らを頼るがよい。我が体の一部が必要ならば、その時またそなたらの前に姿を現そう……」 水の精霊はそう言うと、今度こそ静かに湖底へと消えていった。 早朝、太陽が登り始める頃、シエスタ、モンモランシー、カリーヌの三人は竜の引く馬車でラ・ヴァリエール領へと向かっていた。 キュルケとタバサは、シルフィードに乗ってガリアに報告し、それから魔法学院に戻るらしい。 水面を引かせたのだから、任務はこれで完了だろう、と笑っていた。 モンモランシーは夕べほとんど寝ていないためか、椅子に座ってすぅすぅと寝ている。 シエスタは自分のマントを広げてから蔓草を巻き付け、袋状にし、その中に水の精霊の涙を入れていた。 これが無ければ、ラ・ヴァリエール領まで波紋を流し続けることになっていただろう、液体を両手に保ち続けるのは、かなり疲れるのだ。 多機能マントを作ってくれたコルベール先生に感謝しながら、シエスタはカリーヌの表情を伺った。 「……何かしら?」 「あ、いえ、何でもありません」 「貴方、さっきから私の顔をじっと見つめているわ」 「すみません…」 シエスタはカリーヌから視線を外し、俯いた。 その手は固く握りしめられ、ぷるぷると震えている。 今にも泣きそうな、それでいて何かに怒っているようなシエスタの雰囲気に、カリーヌは首をかしげた。 「ミス・シエスタ、言いたいことがあるのならば言ってご覧なさい。平民として育ったとしても、今の貴方はもう貴族なのです。堂々としなければなりませんよ」 シエスタはツバを飲み込んだ、その音がやけに大きく体の中で響く。 「……悔しいんです、私」 「悔しい?」 「もっと早く、波紋が使えていれば、ルイズ様を…」 「ミス・シエスタ。貴方にとってルイズはどんな貴族でしたか?」 「私にとって、ですか?私がメイドとして働いていた時…ルイズ様から料理の感想を何度か聞きました」 「感想?」 「はい。あれは…二学年になられて間もない頃でした」 シエスタは、ルイズとの馴れ初めを話した。 包帯を借りに来た時のこと… 食事を美味しいと言ってくれたこと…… 給仕の最中に水をこぼしてしまった時は、謝るときでも自信を持ちなさいと励ましてくれた。 「今思えば…ルイズ様は、自分に与えられた仕事を、役目を、その立場における責任を全うしろと、仰っていたのかもしれません」 「そう、ですか」 カリーヌは一言呟くと、それっきり黙ってしまった ふと窓の外を見ると、遠くに羊飼いらしき少女が見えた。 少女の被っている麦わらの帽子が風に飛ばされると、帽子の中からピンク色の髪の毛がふわりと広がった。 「…!」 だが、それは見間違いだった。 よく見れば、よくある茶色の髪の毛で、しかも背格好もルイズより大きい。 カリーヌの頬を、自然と涙が伝った。 ルイズは、顔に火傷を負って、どこかで生きているかも知れない。 しかしそれ以上にカリーヌの心を揺さぶったのは、シエスタの言葉だった。 ルイズの言葉はシエスタに受け継がれ、『活きて』いる。 母としての悲しみと、貴族としての喜びが混ざり合い、カリーヌの瞳からとめどなく涙が流れていった。 そして少しの時が流れ、場面は魅惑の妖精亭。 「なんだ、これは」 アニエスは、テーブルに置かれた豪華な料理と珍しい高級酒に、どう反応すれば良いのか解らずにいた。 「アニエス様!この間はありがとうございました、どうぞ気の済むまで食べて下さい!」 魅惑の妖精亭で働いている店員一人が、アニエスに駆け寄り礼を言う。 「この間?何のことだ?」 「格好良かったです、いけすかないチュレンヌの取り巻きを一網打尽にして…私達みんなアニエス様のおかげで助かったんですから」 「……記憶にないな、私はこの店に食事をしに来たことしか無いが」 「ああん、もうそんな謙遜するところが素敵ですぅ」 「あー、その、何だ、とにかく。こんな豪華な料理は食べきれない。この皿だけでいいから後は皆で食べてくれ…」 「えーっ!」 驚く店員に、店長の娘ジェシカが近寄って耳打ちした。 「ほら、駄目よそんなことじゃ。接待するのもサービス、知らんぷりするのもサービスなんだからね」 「そ、そうですね。それじゃあアニエス様。ごゆっくりおくつろぎ下さいね」 そう言って二人は、アニエスのテーブルから離れていった。 アニエスは自分の頬をつねって、痛みを確認した。 「夢じゃないな。だとすると…」 アニエスが店内を見渡すと、一人の女性が目についた、ルイズである。 ルイズはアニエスの視線に気づいて、アニエスのテーブルに近寄った。 「おい、どういう事だこれは」 「格好良かったわよ。賄賂を強要して私腹を肥やすチュレンヌに、剣だけで渡り合う女シュヴァリエ・アニエス。女王陛下も喜んでくれるわ」 「やっぱりお前の仕業か…」 ため息をつくアニエスを見て、ルイズはくすくすと笑った。 「ところで、明日、二人組がここに来る。護衛を頼むぞ」 「二人組?」 「あぶり出し…いや、ねずみ取りを明日行う。念のため王宮から出てくる馬車のうち、酒樽を三つ積み込んだ馬車を護衛してくれ」 「…二人って、あの二人か。まったく無茶な作戦を考えるわね」 「発案者はそのお二人だよ」 「まあ!」 ルイズが大げさに驚くと、何人かの店員と客が、ルイズの方を見た。 それに気づいたアニエスは気まずそうに顔をしかめたが、ルイズはあえて大きな声でこう続けた。 「お酌できるなんて光栄ですわ」 「え?あ。ああ」 アニエスは思わずグラスを手に取り、ルイズの前に差し出した。 ルイズは差し出されたグラスは細く、縦長のものであった。 ルイズは悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべると、グラスにワインを注ぎ、アニエスの手に自分の手を重ねた。 そのままアニエスの唇にワイングラスを運び、ルイズはグラスの反対側にキスをした。 「「「「「「キャー♪」」」」」」 店内から黄色い声が上がる。 他にも「やれやれ!」とか「もっと!」とか「おおお!」とか、驚きの声が上がっていた。 グラスが見えぬ位置からでは、ルイズがアニエスにキスをしたと勘違いするであろう。 事実、何人もの人が勘違いをして、二人に向けてヒューヒューと口笛を鳴らし、はやしたてていた。 魅惑の妖精亭から少し離れた宿屋では、ワルドとロングビルが、情報交換をしている所だった。 今、魅惑の妖精亭で皿洗いをしているのは、ワルドの遍在である。 「……って事は、やっぱりアタシを助けたのは、アンタだったのかい?」 「僕が助けたのは偶然だが、ルイズの意志でもある」 「まいったね…あの嬢ちゃんにも、あんたにも恩を作られちゃったか」 「返せとは言わないさ、裏切りさえしなければな」 「裏切り者のアンタがそれを言うと、なかなか皮肉だね」 「フン」 ラ・ロシェールで起こった出来事や、アニエスに連れられてトリスタニアに戻ってきた事を話したロングビル。 彼女は近々ウェールズと接触し、今後のことを話し合うらしかった。 「トリステインにもアルビオンにも協力はしないさ、でも、嬢ちゃんには協力するつもりだよ」 「ルイズが話していた、ティファニアという娘のためか」 「…アタシの家族さ。神聖アルビオン帝国とやらを頬って置いたら、いつティファニアに危害が加えられるか解らないからね」 椅子の背もたれに体を預けて、ロングビルが大きな欠伸をした。 「ふわ……今のままじゃアルビオンに密航もできないしねえ、嬢ちゃんを手助けするのが一番の近道だろうと思ったのさ」 「かも、しれないな」 ワルドは薄笑いを浮かべた、嫌みたらしい笑みではなく、同感だと言いたげな笑みであった。 「む? 店が騒がしいな」 「ああ、そういえばアニエスが店に立ち寄るとか言ってたよ。ルイズとの関係を悟られるのは困るから、アタシはごめんこうむったけどね」 「何!何だと!」 ワルドが珍しく、狼狽えたような声を上げた。 「ちょっ、ちょっと、どうしたのさ」 「………フーケ、一つだけ聞こう。ルイズに何かされたことはあるか?」 「はあ? まあ、抱いてくれって言われたことはあるけど(母性的な意味で)」 ワルドは天を見上げてから、その場にがっくりと項垂れた。 「どうしたんだい」 ロングビルがワルドの顔をのぞき込むと、ワルドは少し渋い顔をしていた。 ワルドは偏在を通して、ルイズとアニエスがキスをしているのを目撃してしまったのだ。 「フーケ、そうだな、仮に、だ。 最愛の妹がレズビアンだったら、君ならどう接すべきだと思う?」 ロングビルの顔が、瞬間沸騰して真っ赤に染まる。 「何想像してんのさ!」 ロングビルの腰の入った平手打ちが、ワルドの頬に命中した。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4509.html
注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 ここはトリステイン魔法学院。トリステイン王国の、全寮制メイジ養成機関だ。 メイジが用いる魔法には、火・水・風・土の四系統がある。 そして扱える系統が増えるにつれ、ドット(1系統のみ)、ライン(2系統)、トライアングル(3系統)、スクウェア(4系統全て)の使い手と呼ばれる。 火の系統の使い手 『微熱』キュルケ 水の系統の使い手 『香水』モンモランシー 風の系統の使い手 『雪風』タバサ 土の系統の使い手 『青銅』ギーシュ ――――そして彼女は―――― 少女は憂鬱だった。 今日は、今年晴れて二年生へと進級した者達の、「使い魔召喚の儀」。つまりは「サモンサーヴァント」が行われる日だ。 使い魔は、メイジにとって、「目」であり「足」であり「盾」でもある。よってこの召喚の儀も、必然的に重要なものとなる。 彼女の名は、ルイズ。「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 名門公爵家、ヴァリエール家の三女。 本来なら、おいそれと話しかけることも出来ないほどの身分だが、今彼女は、朝からずっと周囲の生徒から皮肉を浴びせられている。 「おい『ゼロ』のルイズ!お前本当にやるのか?間違っても俺達を爆発に巻き込むんじゃないぞ~」 「ダメもとでやってみたら、もしかしたら成功するかもしれないぞ?原形をとどめてたらいいけどなぁ!はははは!!」 (はぁ・・どうしてこんな目に・・・) この罵詈雑言は、なにも今日に限ってのことではない。理由は一つ。 彼女が「魔法の使えないメイジ」だからである。 彼女は有名貴族の出でありながら、これまで一度も魔法が成功したことはないのだ。 ゆえに『ゼロ』。「ゼロのルイズ」だ。 「ルイズ~ごきげんようー」 怪しげな微笑を伴なって現れた、ルイズと対照的の豊満な肉体を持つこの女性の名は、キュルケ。 火の系統を得意とする、トライアングルメイジだ。 「あぁあんたね・・いったいなんの用?」 ぶっきらぼうに返すルイズ。キュルケとはいわゆる、犬猿の仲だ。出来れば早々に退散したいと思っていた。 「あらつれないわねぇ。今日はいよいよ召喚の日じゃない。あなたにはいったいどんな素敵な使い魔が現れるのかしらねぇ~。くすくす・・・」 「・・・・・言いすぎ・・・」 キュルケの横に立つ、青い髪の少女が言う。 だが、他人に哀れまれるなど、ルイズのプライドが許さなかった。 「・・・見てなさい・・・。絶対にあなたたちより高貴で!美しくて!そして強力な使い魔を召喚してみせるんだから!!!」 「おいおい。ルイズが吹いたぞ」 「ははは召喚の時間が楽しみだな、ゼロのルイズ」 負けてなるものか。ルイズは胸に固くそう誓った。 もともとプライドの高い少女である。このようなことを言われて、黙っていられるわけがないのだ。 そして召喚の時・・・ キュルケはサラマンダーを、タバサはなんと風竜を召喚した。 「おいルイズ。次はお前の番だぞ。どうせ何も召喚できないだろうけどな」 (どうしよう・・これで成功しなかったら・・・) ルイズがそう苦悩する中でも、野次はとびつづける。 (・・・みてなさい・・!) 詠唱が始まる 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 (・・・・お願い・・・!!) 「私は心より求め、訴える! 我が導きに、応えなさい!!」 すると突如、少女のまわりで、本来召喚の儀式では起こりえるはずのない爆発が起きた。 人々が驚き叫び、逃げ惑う 体中に纏う頑強な鎧 腰に携えた長剣 真黒の長髪 真紅のマント 爆発によって巻き起こった粉塵が晴れたとき そこにいたのは 一人の男だった (に・・人間!?どうして・・・そんな・・・) 片膝をついたその男は、鎧やマントを身に纏ってはいるが、杖を持っていなく、剣しか所有していないように見える。 おそらく、裕福な平民なのだろう。 だが次の瞬間、ルイズは自分の浅はかさを後悔した。 「お・・おい!ルイズが平民を召喚したぞ!!」 「は・・・ははは流石ゼロのルイズだ!やることが違うな!!!」 とりあえず差し迫る害がないと判断すると、途端に周りがざわめき始める。 「ねぇタバサ。いったいどういうことかしら、これ」 「・・・危険」 「え?どういうこと?タバサ」 今この場で、自分たちがどういう状況にあるのかを把握出来ているのは三人。 タバサとコルベール。 そしてルイズだけだ。 (・・まずい・・・!!あの男は・・危険だ!!) これまで数多の死線を越えてきたコルベールだが、そんな彼でさえ、体中の細胞が警告を発している。 ただ一つ「逃げろ!!!」と。 「あ・・あなた・・いったい誰・・・?」 生まれて初めて感じる、言いようのない恐怖を感じながらも、少女は言った。 貴族としてのプライドが、この場から逃げ出すことを許さなかったのだ。 『彼』もまた困惑していた。 自分は完全に消滅したはずなのだ。 なぜ生きている?そしてここはどこだ? 目の前に広がるこの光景は何だ? 彼自身、何故そう言ったのかはわからない。 もはや捨てた名だ。 だが彼はゆっくりと。しかしハッキリとこう答えた。 「Wladislaus Drakulya」 そして続けてこう言った。 「アーカードだ」
https://w.atwiki.jp/dai_zero/
ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました スレ の仮まとめサイトです 本日は - 人の召喚がありました 昨日は - 人の召喚がありました 現在までに - 人の召喚がありました 元ネタについて ゼロの使い魔(wikipedia) ダイの大冒険(wikipedia) 現行スレ ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました8 過去スレ ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました7 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました6 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました5 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました4 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました3 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました2 ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました
https://w.atwiki.jp/darthvader/
銀河共和国元老院議長、いや、いまや銀河帝国の皇帝となったシスの暗黒卿、ダース・ シディアスことパルパティーンは目の前で起こったことがにわかには信じられず、彼にし ては珍しく呆けた表情を浮かべていた。 パルパティーンの新しい弟子ダース・ベイダーは死闘の末にジェダイマスターのオビ= ワン・ケノービに敗れ、四肢と大部分の循環機能を失った。 瀕死のヴェーダー卿を回収し、長時間に渡る再生手術を施して機械人間として彼をどうに か蘇らせた矢先にそれは起こった。 装甲服にヘルメットと黒マント、銀河中を恐怖させるべきダークサイドの化身として生まれ 変わったヴェーダー卿の肢体を拘束した手術台。 その手術台が水平から垂直に立ち上がる最中、突如として現れた光のゲートの中にベイ ダー卿の姿が掻き消えたのだ。 主を失った手術台だけが、仰々しい機械音と共に空しくパルパティーンの前にそびえ立っ た。 ゼロの使い魔の世界にベイダー卿が使い魔として呼び出されてしまったという設定で話は進んでゆきます。 有志で勝手に編集しちゃってね 以下スレ内ルール↓ 予測レスはNG 設定の矛盾は深く考えてはならない。感じるんだ。フォースで。 フォースと共にあらんことを・・・ 184 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [] 2007/05/02(水) 00 51 32.36 ID 5RtRgVVd0 一応第三部「シス卿の帰還」まで構想してはいるのだが、そこまで読者を飽かせることなく ついてきてもらえるかどうか… 196 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [] 2007/05/02(水) 00 54 29.46 ID 5RtRgVVd0 まあとりあえず今日はここまでかな。 第二部はスレが残ってたらそこに投下するけど、落ちてたらまた立てるよ。 あと、ベイダー強すぎという意見もあるけど、ゼロ魔の才人も一巻じゃ全然苦戦してないしな。 歴代スレ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1177343414/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1177502416/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1177679802/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1177862566/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1177949691/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178026355/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178190688/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178298198/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178435143/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178621401/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178719378/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1178896847/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1179065354/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1179223925/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1179590273/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1179756668/ 【作者は】ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです【ドS】 http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1179850267/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1180445055/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1180887325/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1181151694/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1181583845/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1182092562/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1182529992/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです 24 http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1182636495/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1183210347/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1183392330/ ベイダー卿がゼロのルイズに召喚されたようです http //wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1183902660/
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3202.html
ルイズは召喚された『それ』を見ていた。 「なんなんだろこれ?」 周りのギャラリーは『それ』の正体が分からないので反応に困っている。 ルイズもこんなものは見たことも無い。 召喚された『それ』はルイズの前で僅かに上下している。 『それ』をなんと表現したら良いのだろうか。 変で、黒くて、でかくて、ずいぶんと硬そうだ。 「とりあえず触ってみようかしら」 ルイズは恐る恐る『それ』に触ってみた。 ルイズが触ると『それ』はピクっと反応した。 「すごーい・・・生き物みたい・・・それに不思議な感触・・・柔らかいようで固いようで・・・」 それにルイズの目の前に現れた『それ』は微かに熱を帯びている。 「とりあえず、よく分からないけど・・・契約しないとね」 ルイズは小さい声で呪文を唱え『それ』に接吻した。 すると、『それ』は更に熱を帯び動き出した。 モンスターファームよりモノリス召喚
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1228.html
「栄光は……おまえに…ある……ぞ…やれ……やるんだペッシ。オレは………おまえを見守って……いるぜ…」 「わかったよプロシュート兄ィ!!兄貴の覚悟が!『言葉』でなく『心』で理解できた!」 成長したペッシはブチャラティを後一歩まで追い詰める。 だが…ブチャラティの『覚悟』には敵わず敗北した。 スティッキィ・フィンガーズのラッシュを受けバラバラになっていく体。 数秒後に訪れる明確な死を感じながらもペッシには死への恐怖はなく、唯唯プロシュートの敵を取れなかったことへの『後悔』だけだった。 (プロシュート兄ィ…ごめんよ……) プロシュートの言った『栄光』………まるでそれが目の前にあるかのごとく、最後の力を振り絞り千切れかけた腕を伸ばすペッシ。 そして…ペッシは光を掴む。 鏡のような光を。 新手のスタンド攻撃かと身構えるブチャラティの目の前で、ペッシは光に呑み込まれた。 「プロシュートが線路わきで死亡している」 ブチャラティ達が去り、しばらく後に現れたメローネが言う。 「全身を強く打ち右腕を失っている」 仲間を失った激情を深く押さえ込み酷く淡々と報告する。 「ん?ペッシがいない?」 確かにペッシの足跡はある。 だが、肝心のペッシがいない。 (プロシュートがヤラれた以上、ペッシが一人生き残ったとは考えにくい…それに、ペッシはマンモーニとはいえ仲間を捨てて逃げるようなゲスじゃない) 若干考えた後、一番確立が高かったモノを報告する。 「……ペッシは別の場所でヤラれたようだ」 仲間の死の報告を終えたメローネの携帯を握る手は微かに震えていた。 (なんで私がこんな目にあうのよ~) 春の召喚の儀を終え部屋に帰って来たルイズは頭を抱えていた。 原因は目の前でバカ面をしている使い魔―ペッシだ。 何度も失敗しようやく成功したと思えば居たのは…首がない変な平民。 泣く泣くファーストキスを捧げ、契約をしてみたら……記憶喪失でペッシという名前しか覚えていないらしい。 しかも…見るからに頭の悪そうな顔。 ルーンが刻まれる時、絶叫を上げていたので根性もなさそうだ。 (私の人生……終わった)orz ルイズは絶望した…前代未聞の平民の使い魔と、それを召喚した『ゼロ』の自分に。 周囲に暗黒を背負っているルイズと状況に付いて行けずオドオドするペッシ。 ……こうしてルイズの栄光への道は先行き暗~く始まった。 ルイズ姉ェの栄光への道
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5977.html
【メイジと使い魔が織り成す大河メルヒェンファンタジー ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの聖戦 虚無の担い手・伝説の使い魔】 暗黒の時代――虚無の担い手がついに誕生し世界は戦乱の渦へと呑み込まれた……。 だが! そんなある日、混沌の闇の中より新たな光を求め、一人のメイジが立ち上がったのだ!! ――という英雄物語を夢見たりしていたルイズが、いよいよサモン・サーヴァントしちゃいます。 使い魔カタストロフ!! (実は↑がホントのタイトルです) 第1話 これがルイズの使い魔だ! 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし"使い魔"を召喚せよ!」 幾度かの失敗のあと、ルイズは今度こそという気持ちでサモン・サーヴァントを唱えた。 するとそれに応えるように、彼女の前に銀光の鏡が現れる。 他の生徒達が使い魔を呼び出した時に現れたものと同じ、まさしくゲートであった。 ――や、やった! 杖を握る手にぎゅぎゅっと力がこもる。 苦節16年。 ついにルイズはやりました、魔法を成功させました。 ルイズの様子を笑いながら見ていた生徒達は、予想外の事態に静まり返る。 いやまさかそんなどうして"ゼロのルイズ"の魔法が成功しているのさ。 しかし、彼等はすぐに思い直した。 ゼロのルイズがいったい何を召喚するのか? それはきっと、すでにこの場に召喚された使い魔のどれよりも劣るものに違いない。 嘲笑の準備が完了した。 さあ出て来い! ゲテモノ使い魔! ルイズと他の生徒達、正反対の期待を高めながらゲートを潜り抜けてくる影を凝視する。 それは人の姿をしていた。 胴体から手足が生え、頭部にはフサフサの髪もある。 シルエットから女性だろうと判別できるのは、球体の如きたわわな胸。 しかしそれは人間ではない。 人間であるはずがない。 そもそも人間が使い魔として召喚された事例など、学院の教師達ですら聞いた事がない。 そしてそれはまさしく人間ではなかった。 人間というには小さすぎた。 人間の頭よりちょっと小さいくらいの身長。 そして頭部から生える一対の触角、噂に聞くエルフの如く伸びた耳。 さらに特徴的なのは、彼女の背中から生えるアゲハチョウの翅。 「妖……精……?」 ルイズが呟いたその単語こそ、まさにその少女を形容するに相応しいものだろう。 赤い髪に青の服に身を包んだその妖精は、まるで可憐な花のような美しさを感じさせた。 驚きが広がる。 あのルイズが妖精を召喚した? しかもすごく可愛いぞ。馬鹿な、ありえない。 逆に、ルイズは歓喜に打ち震えていた。 亜人が召喚される――というケースも聞いた事はない。 しかし妖精といえば基本的に物語の中に出てくる存在で、その姿を目撃した者は少ない。 そんな希少価値の高い妖精が自分の使い魔になるだなんて、何という幸福だろう! 「……あなたが私を召喚したご主人様?」 愛らしい声色で妖精は問い、ルイズは満面の笑みで答える。 「そ、そうよ。私があなたを召喚したの。さっそくだけど契約してもらうわ」 「はい、ご主人様」 可愛くて従順――ルイズは心の中でガッツポーズ。 今日から真ルイズ・フランソワーズのメイジ物語が始まるのだ。 明日からはきっと系統魔法だって成功しちゃったりして、家族も諸手を上げて大喜び! 長き冬が終わり、永久に続く春が訪れたと確信する。 ――始祖ブリミルよ、ありがとうございます。 感謝の祈りを捧げたルイズは、コホンと咳払いをしてから詠唱を始める。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 ルイズの小さな唇が、さらに小さな妖精の唇に重ねられる。 すると妖精の胸元が輝きだした。 「キャッ……いたたたたっ!」 「お、落ち着いて、大丈夫よ。使い魔のルーンが刻まれてるだけだから、すぐ終わるは」 「……本当だ、もうおさまった。でもこんな所に刻まれなくても……」 妖精とはいえやはり女の子。 ルーンは上から覗き見る事ができる部分の乳房にくっきりと刻まれている。 ともかく、これで二人は正真正銘コントラクト・サーヴァントを終えたのだ。 「ふーむ、珍しいルーンだ。スケッチしておこう」 と、二人の間に顔を突っ込んでくる教師コルベール。 彼は妖精の乳房をまじまじと見つめながらスケッチを書き……。 「い、いやー!!」 妖精は恐怖とおぞましさのあまり、全身を輝かせると、コルベールに閃光を浴びせた。 「どわー!」 哀れコルベールはこんがり焼けて地面に倒れてしまった。 そして、召喚し契約したばかりの妖精も――。 「ちょ、ちょっと!? どうしたの、ねえ、大丈夫!?」 「も、申し訳ありません……あれが私にできる唯一の攻撃、自らの生命力と引き換えに――」 「そ、そんな! せっかく、せっかく召喚したのに!」 もうルイズはパニック状態だ。幸福の絶頂からいきなりどん底に叩き落されてしまった。 コルベールのセクハラに対する怒りが介入する余地がないほど混乱し、絶望している。 また新しい使い魔を召喚すればいい、だなんてルイズには思えない。 魔法が成功した喜びを、召喚できた喜びを、契約できた喜びを、 初めて分かち合った相手こそまだ名前も聞いていない使い魔の妖精なのだから。 まだ出逢って数分も経っていないけれど、ルイズにとってはもう、かけがえのない存在。 あまりにも早すぎる別れ――。 「で、でも安心してください。妖精は一生のうち、6回生まれ変わるの。 それがちょっと早くなっただけですわ……。 それより……ご主人様、私が召喚の呼びかけに応えたのはあなたの力になるため……。 漠然とだけと感じるの、あなたの未来に待ち受ける数多の試練、数多の死闘が……」 「え、ええっ!?」 「さあ、涙を拭いて……私は大丈夫ですから……どんな苦難にも負けないでください」 「わ、解った。試練だろうが死闘だろうが、私、負けないから……しっかりして!」 情に流されて、勢いで言ってしまっているのだとルイズは自覚していない。 けれど、一度口にした言葉、それを破れるルイズではない。 だからこの約束と決意は、絶対に破れる事はないだろう。 「……よかった」 妖精は安堵の笑みを漏らすと、再びその身体を発光させる。 「私は今! 新たなる希望を得て究極の妖精へと生まれ変わります!! そして……ご主人様と共にすべてを懸けて戦いましょう!!」 光はさらに強まり、ルイズの視界が白に染まる。 これが、妖精の生まれ変わり……究極の妖精への進化……。 ある種の感動がルイズの胸中で渦巻いた。 そして、光が消え去ると同時に妖精の姿が変化する。 ――私達の物語は、今度こそ真の始まりを―― 「あらよーっと!」 ぽよ~ん、と気の抜けるような音を立てて現れたその姿、宙に浮くフグだった。 魚介類のフグだった。 毒があるというフグだった。 丸くふくらんでいるフグだった。 「あ~身も心もすっきり」 打って変わって軽い口調のフグ。さっきまでの可憐さなど微塵も残っていない。 「あ、あ、あ……」 あまりの落差に、ルイズは世界がガラガラと崩れて行くかのような錯覚を感じた。 何かの間違いであって欲しい。 けれどフグの胸、というか口の下あたりには使い魔のルーンがくっきりと。 「可愛らしい妖精が……私の使い魔が……ふぐ……フグ……河豚……」 「何を失敬な」 むっとした表情を浮かべたあと、フグは自慢げな表情で解説する。 「あっし達妖精は成長に応じて姿や名前が変わるんでやんす!」 ナターシャ ↓ ヴィヴィアン ↓ カトリーヌ ↓ ステファニー ↓ 【究極の妖精 ハチ】 「強く美しく成熟したあっしはアネさんの心強いパートナーとして――」 もう何も聞こえない。 外見どころか性格まで変わり果ててしまった己の使い魔を前に、茫然自失のルイズ。 コントのような出来事を一部始終見ていた生徒達も、あまりの不憫さに何も言えないでいる。 こうして――。 ゼロのルイズと究極の妖精ハチによる英雄物語が――始まるのか? オマケ ルイズの疑問 「ちょっとハチ。あんたついさっきまで女の子だったわよね? 今はどう見ても(人格が)男なんだけど」 「なーに、自然界じゃよくある事でやすよ! 魚でもクロダイやベラなんかも成長に合わせてメスからオスへ性転換するでやしょ?」 「やっぱり魚介類か……」 「その証拠にホレ!」 ハチは白子を見せた。 魔法学院に爆音が響いた。 ど完
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5135.html
前ページ次元の使い魔 執念があった。 強靭な精神に裏打ちされた目的意識。 その意思は、妄執ともいえるほど確固たるもの。 目的を遂げるまでは、どれだけの年月が経とうと消え去る事はない。 「俺は……」 虚数空間に呟きが漏れる。 言葉とは存在の証明。 形を持ち、紡いだ者を人たらしめていく。 ぼやけていた視界が晴れると同時に、自分自身の存在が再構築されていく。 曖昧だった意識はようやく知覚できるほどに浮上した。 だが、まだ足りない。 この程度では足りない。 もっと、もっとだ。 腕を伸ばし、この先にある何かを掴むイメージをする。 それをこの手に掴み取り、引き寄せる。 「俺は……死なんぞッ!」 言葉に応えるかのように、更に意識がクリアになっていく。 狂おしいほどの感情のうねりが、奔流となって空間に迸る。 因と果が重なったのを感覚的に理解できた。 淡い光が満ちてくる。 どこか別の世界への扉がゆっくりと開いていく。 ──次元が、繋がる。 「あ、あんた誰……?」 抜けるような青空をバックに、一人の少女が彼を見下ろしていた。 どこか怯えたような表情で、少し距離を取っている。 少女の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 トリステイン魔法学院に通う、貴族の子女である。 春の使い魔召喚の儀式で、目の前の彼をたった今召喚したのだ。 ルイズが怯えたのも無理はなかった。 彼女が行った『召喚』は、明らかに異常事態だったからである。 「早く答えなさいよッ!?」 ルイズの叫び声が響いた。 実際は、半ば虚勢であった。 大きな声でも出さなければ恐怖にのまれてしまいそうだったのだ。 このルイズの金切り声に、召喚で喚びだされた彼が反応した。 倒れていた体を緩慢な動作で起こして立ち上がり、気だるげに辺りを眺める。 まず最初に、足元からあちこち煙が上がっているのに目に付いた。 鉄と油の混じった、焼け焦げるような独特の臭いもする。 何度も嗅ぎ慣れた臭いだ。 その臭いと煙の元は、大きな鉄の塊が発していた。 歪な鉄の塊が、無造作に煙を吐きながらそこら中に散乱している。 元は大きな『何か』であったそれらの鉄塊は、異質な存在感を示していた。 「……どこだ、ここは?」 今度は、少し視線を上げてみる。 こちらを注視するような視線を向ける、奇妙な服を着た子供達の群れがあった。 その人垣の向こうは、見渡す限りの草原だ。 穏やかな風に、草が揺れている。 豊かな緑が目に眩しい。 見慣れない形の大小様々な草が競うように生えている。 ……草? 「草だと?」 自分が最後に見た光景は、ゴビ砂漠の不毛な土地だったはず。 乾ききった死の大地だ。 決してこんな緑溢れる草原地帯ではなかった。 草原の向こうには、西洋風の城まで見える。 何の冗談かと思った。 元いた場所とは明らかに違いすぎる。 足元に散乱する金属の断片と、見慣れない風景。 脳裏を過ぎるのは自分の記憶の最後の光景。 そして、虚無の中で揺う意識とその覚醒。 まさかここは……? 唐突に閃く。 脳内で瞬時にいくつかの仮説が組み立てられた。 確証はないが、現状の情報を判断すると間違いはないだろう。 「クク……」 彼の顔が愉悦に歪んだ。 まだ少年とも呼べるその外見からはありえないような、歪な笑み。 少年の顔は狂気に染まっている。 そんな少年を、呆然としたようにルイズは見つめていた。 「あんた、誰なのよ……?」 三度目の問い。 ようやく少年がルイズへと顔を向けた。 黒い髪に黒い瞳の、まだ幼さの残る風貌だ。 一見すれば凡庸な印象を受けるだろう。 さっきの歪な笑みは一体何だったのかと思うほどだ。 どこにでもいるようなごく普通の少年というのが、ルイズから見た第一印象だった。 ルイズと少年の視線が交錯する。 「ひッ!?」 見つめられた瞬間、ゾクリとした。 思わず背筋に冷たいものが走ったルイズは、身震いをした。 先ほど自分が下した少年への判断が間違っていた事が、一瞬で理解できた。 ──その目だけが、違った。 明らかに普通の少年がする目ではなかった。 侮蔑とも、哀れみとも違う、ある種の視線。 氷のような目で、少年はルイズをじっと見ている。 それはまるで研究者がモルモットでも観察しているように冷淡で、冷酷な瞳だ。 口元に嘲笑を張り付かせながら、少年が口を開いた。 「俺か? 俺は……」 そこで言葉を区切った。 一呼吸置いて、自分自身の言葉を確認するかのように喋る。 「俺の名は……木原マサキだ」 世界に宣言するかのように、木原マサキの言葉は放たれた。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、不安でいっぱいだった。 春の使い魔召喚の儀式でルイズが喚び出したのは、一人の少年。 そして、煙を吐いている大量の鉄の塊。 前代未聞の出来事だった。 人間が使い魔として召喚されただけでも異常なのに、鉄の塊までセットで付いてきたのである。 もう訳が分からない。 不安になるなと言う方が無理だった。 一応少年に名前を聞いてみたら『木原マサキ』だと返事はしたが、それっきり。 名乗った後はルイズに興味を無くしたかのように視線を外し、辺りを眺めては何かを考え込んでいる。 呆然と立ち尽くすルイズとは、もう目も合わせようとしない。 どうやら完全に無視されているようだった。 何だか腹が立ってきた。 さっきは目つきに驚いたが、よくよくこのマサキという少年を見てみると、明らかにただの平民である。 貴族の証である杖も持っていないし、マントもない。 鉄屑と一緒に平民を呼び出してしまった……。 そう思うと、腹が立った後は今度は自分が情けなくなり、今度は悲しくなってきた。 「ルイズが平民と一緒にゴミを呼びやがったぞ!」 ルイズの召喚を遠巻きに見ていた生徒の一人が声を上げた。 他の生徒達も次々と囃し立てる。 「しかも、平民には無視されてるぜ!」 「さすがはゼロのルイズだ!」 煽る声は止まらない。 「違うわよ! ちょっと間違っただけだもん!」 立ち上がって怒鳴り返す。 しかし、自分でも反論は無駄だと理解していた。 「お前はいつも間違ってばっかりだろ!」 人垣がどっと爆笑する。 「違うもん! そんなんじゃないもん!」 「じゃあ、あの平民は何なんだよ?」 「そ、それは……」 言葉に詰まる。 上手い言い訳が見つからない。 「やっぱり『ゼロのルイズ』の名前通りだな!」 「召喚まで失敗とは、さすがだぜ」 「違うもん……」 蔑む様な視線が無遠慮にルイズに突き刺さる。。 生徒達の笑い声が、ルイズの耳にいつまでも木霊した。 ルイズはうなだれたまま、結局何も言い返す事はできなかった。 悔しくて仕方なかった。 生徒の中にはドラゴンを召喚した者もいた。 あのツェルプストーでさえ、サラマンダーを召喚していた。 せめて、犬や猫のような小動物でもいいから、普通の使い魔を召喚したかった。 いくらなんでも、平民の使い魔なんてひどすぎる。 目の前が涙で薄っすら滲んできた。 強く噛み締めた唇からは、かすかに血の味がした。 「ミスタ・コルベール。もう一度召喚をやり直す事はできないのでしょうか?」 ルイズは、こちらを気の毒そうに眺めていた禿頭の教師に声をかけた。 「それは駄目だ。ミス・ヴァリエール」 「どうしてですか!?」 「これは決まりだよ。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今、やっている通りだよ」 木原マサキと名乗った少年が『使い魔』という単語にぴくりと反応した。 ずっと無視してきたくせに、今度は探るような目でルイズを見ている。 コルベールの話は続く。 「この春の使い魔召喚は、伝統ある神聖な儀式です」 「それは分かってますけど……」 「いいですか、ミス・ヴァリエール。あなたが好む好まざるに関わらず、彼を使い魔にするしかないのです」 「でも先生! 平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 ルイズの言葉に人垣がどっと笑った。 うなだれるルイズに、コルベールが優しく声をかける。 「平民であろうと、君にとってきっといつか素晴らしい使い魔になるさ」 「でも……」 「これ以上話す事はないよ、ミス・ヴァリエール。さぁ、儀式を続けなさい」 「分かりました……」 コルベールに促され、ルイズは使い魔の少年へと足を向けた。 「ちょっと」 ルイズはマサキに声をかけた。 「俺に何か用か?」 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生ないんだから」 「何がだ?」 ルイズは何も答えず、手に持った小さな杖をマサキの前で振った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」 早口のように唱え、自分の唇をマサキの唇へと重ねる。 マサキは多少面食らった顔をしたかと思うと、ルイズの背中に腕を回した。 「──んッ!?」 ルイズの口内にマサキの舌が侵入してくる。 蛇のように絡みつき、こちらの舌を激しく求めてくる。 ルイズの顔は一瞬で真っ赤に沸騰し、頭の中は真っ白になった。 気が付けばマサキを突き飛ばしていた。 「あ、あ、あ、あんた!? 何すんのよッ!?」 「何を慌てている?」 平然と返すマサキ。 「あ、あんたねぇ!?」 「先に誘ってきたのはそちらだ。気取る事はなかろう。俺に惹かれているのを隠す事はない」 「あんたに惹かれてなんかないわよッ!?」 ルイズが叫ぶが、マサキは話を聞いていなかった。 どうやら左手の甲に突然襲ってきた痛みに、顔をしかめているようだ。 「おい。何だこれは?」 「何って、使い魔のルーンが刻まれただけよ」 「使い魔のルーンだと?」 火傷跡にも似た奇妙な線が、マサキの左手の甲に刻まれていく。 「ほほぅ、これは珍しいルーンですな」 コルベールがやってきて、マサキの甲に刻まれた傷をしげしげと眺めた。 「見た事のない形ですな。一応、写しておきましょうか」 そう言うと、懐から紙とペンを取り出してスラスラと書き写した。 マサキは無言でその様子を観察していた。 「さてと、じゃあみんな教室に戻りましょうか」 コルベールはきびすを返すと、宙に浮いた。 他の生徒達もコルベールに続いて次々と浮かび上がる。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「『フライ』も『レビテーション』も使えないと不便で仕方ないな!」 「平民の使い魔一緒に歩くのがお似合いよ!」 口々にそう言って、笑いながら飛び去っていく。 残されたのは、ルイズとマサキの二人だけになった。 「飛んだ……?」 内心では驚きつつも表情を崩さないマサキの前で、ルイズが仏頂面のまま言う。 「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。今日から私があんたのご主人様よ。覚えておきなさいよ!」 「ご主人様だと?」 「そうよ。あんたは使い魔として私が召喚したのよ。平民が貴族に仕えられるんだから、光栄に思いなさい」 「使い魔? お前に従えというのか?」 憮然とした表情のまま、ルイズが答える。 「そうよ! 何か文句あるの!?」 「……いいか、言っておくぞ」 マサキはおもむろにルイズに近寄ると、胸倉を掴み上げた。 小柄なルイズの体が持ち上がり、爪先立ちになる。 「な、な、何すんのよ!?」 気丈に振舞って見せるが、ルイズの声は震えていた。 「俺に命令するな。操ろうなどと思うな。俺は好きなようにやらせてもらう」 それだけ言うと、投げ捨てるように掴んだ手を離した。 「きゃあッ!?」 尻餅をついたルイズを、マサキは冷たい目で黙って見下ろしていた。 ルイズとマサキ。 異界にて交わってしまった二つの運命の鎖。 物語は、ここより始まる。 動き出した流れは止まる事はない。 ──冥府の王は、再びハルケギニアの地で目覚める事となる。 前ページ次元の使い魔
https://w.atwiki.jp/pgbr-himmel/pages/66.html
7.灼眼のルイズ (ルイズ) 女 髪が短くボーイッシュな外見。性格も少し威圧的であるが、精神的には弱い。打たれ弱く、状況に混乱することも多々ある。 外見や性格の割には運動神経が乏しいため、自分の中で葛藤を抱えている部分も見られる。 自信をなかなか持てず、ひとりという環境が苦手なため、必ず誰かに頼ろうとする。その部分が他人にとっては迷惑、鬱陶しがられることもしばしば。言われたことは出来る、だが自分からするのは苦手。人に暴力を振るうのは平気だが、傷を負わせるレベルまで行くと強い罪悪感に襲われる。 頭はそれなりに働く方で、臨機応変な判断が出来る(ただしそれを行う実行力はあまりない) 武器の扱いに関しては出来ない方だと言える。 過去にいろんなことから逃げてきたのか、何事からも逃げだそうとする姿勢がときどき見られる。
https://w.atwiki.jp/marowiki001/pages/3587.html
目次 【時事】ニュースルイズ・フロイス 【参考】ブックマーク 関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース ルイズ・フロイス gnewプラグインエラー「ルイズ・フロイス」は見つからないか、接続エラーです。 【参考】 ブックマーク サイト名 関連度 備考 ピクシブ百科事典 ★★ 関連項目 項目名 関連度 備考 参考/織田信奈の野望 ★★★★ 登場作品 参考/佐藤利奈 ★★★ キャスト タグ キャラクター 最終更新日時 2013-12-14 冒頭へ